毒がある危険生物の中には、チクチクしたりヒリヒリするなど、比較的毒性が弱い生物が大半を占めます。
ただし毒性が弱い生物だけではなく、非常に強い毒性を持った生物も少なからず生息しています。人が刺されると、場合によっては命の危険にかかわる毒を持った生き物も生息しています。
ここで紹介する危険生物は、比較的毒性が強い生物になりますので、十分注意して海を楽しみましょう。
ハブクラゲ
ハブクラゲは沖縄の海洋生物の中で最も被害が多い生き物になります。
本州でよく見られるミズクラゲなどと比べると、非常に毒性が強いクラゲになります。
傘の大きさは10~15センチほどですが、毒がある触手は1メートル以上の長さに達します。
クラゲの仲間になりますので、動きは遅いのですが、半透明で触手も長くなるため、気付かずに触れてしまい刺されるケースが多く発生したいます。
干潮時の潮だまりや海の浅瀬にも多く見られますので、海水浴やシュノーケル中の被害が多い特徴があります。人工ビーチなど流れが無く淀んだ海に多く見られる傾向があります。
ハブクラゲは非常に強力な毒を持ち、獲物を一瞬で殺す力を持っています。この毒の影響は人間にも強力に作用し、刺されたところがミミズ腫れや水ぶくれを起こし激痛が走ります。
最悪の場合は呼吸困難や心停止を起こし、死亡する可能性もある危険生物です。過去には3名の子供がハブクラゲによりなくなっています。
ハブクラゲの毒は、触手にある刺胞と呼ばれるカプセルのような物の中に入っており、刺激を受ける(触れると)と毒針が飛び出します。
万が一刺された場合には、お酢により触手を洗い流すことが有効ですが、これは応急処置に過ぎません。
特に子供が重症化するケースが多いようですので、速やかに医療機関に行くようにしましょう。
遭遇率:非常に高い
毒性:かなり強い
被害場所:ビーチなどの浅瀬
カツオノエボシ
ハブクラゲと同じように浮遊する生物で、クラゲと似た特徴を持っていますが、生物学的には全く異なる生き物です。
大きさは10cmほどで透き通った藍色の浮き袋を持っています。中には二酸化炭素が詰まっており、通常は海面に浮かんで風により移動しています。浮き袋は常に膨らんでいるわけではなく、一時的にしぼんで潜っている場合もあります。触手は長いもので50センチほどになります。
カツオノエボシは普段沖合を漂っていますが、風によって海岸近くまでくることがあり、このとき被害が起きやすい生物です。
殆どの場合は水面に浮かんでいますので、シュノーケルや海水浴での被害が多いようです。場合によっては砂浜などに打ち上げられている場合もありますので、磯遊びなどでも注意が必要です。
触手に強力な毒があり、刺されると強烈な電撃を受けたかのような激痛があります。刺された場所は腫れ上がり、痛みは長時間続きます。アナフィラキシーショックなどで、死亡例もあるため注意が必要な危険生物です。
遭遇率:やや高い
毒性:かなり強い
被害場所:主に水面
オコゼ・カサゴ
水底にじっとしており、岩などに擬態しており、初心者には非常に分かり難い外見をしています。
砂地の海では砂にもぐったり、体に砂をかけ隠れている場合もあるので注意が必要です。
大きさは最大で30センチほどですが、数センチしかない子供も多く見かけます。
背びれの棘に強力な神経毒を持ち、過去には死亡例も報告されています。
複数の種類が生息していますが、写真のオニダルマオコゼと呼ばれる種類は、非常に強力な毒を持ち、ハブ毒の30倍や地球上最強の生物毒を持つ生物の1つと言われています。
非常に擬態が上手で、人勝近づいても逃げないため、誤て踏んでしまったり掴んでしまって刺される場合が多いようです。針は非常に硬くビーチサンダルなどでは防ぐことが出来ません。マリンブーツを履いていても貫通する場合がりますので注意が必要です。
生息場所は数十メートルの深い場所から、ひざ下までしか水深が無い浅い場所など、様々な場所に生息しています。
万が一刺された場合には、神経毒で体が痙攣して溺れないために、海からすぐに上がる必要があります。
毒の主成分はタンパク質ですので、45度以上のお湯につけるとで毒性を和らげることが出来ます。
上記はあくまでも応急処置ですので、刺されてしまった時は可能な限り早急に医療機関で受診することをお勧めします。
遭遇率:非常に高い
毒性:もっとも強い
被害場所:浅瀬を中心に深場でも
ミノカサゴ
上記で説明したカサゴの仲間ですが、見た目がヒラヒラしており水中を泳いでいるなど、姿や形に大きな違いがあります。
ミノカサゴにも複数の種類がありますが、岩陰や水底付近を漂うように泳いでいる場合が多い魚です。背びれの棘に毒を持つなどの特徴はカサゴの仲間と共通です。
大きさは成魚で30センチほどですが、10センチほどの子供も良く見かけます。泳ぎはあまり早くありませんが、気が強く危険を感じると向かってくることもあるので注意が必要です。
見た目が綺麗なため触ろうとして刺される事や、捕まえようとして刺される事が多い危険生物になります。
分かりやすい外見をしていますので、知識があれば触らないともいますが、好奇心が強い子供などは注意が必要です。
万が一刺された場合の対応は、オコゼやカサゴに刺された場合と基本的に同じです。
遭遇率:非常に高い
毒性:かなり強い
被害場所:岩場の影など浅瀬でも注意
ウミヘビ
ウミヘビの仲間は、沖縄でも複数の種類が生息しており、クロガシラウミヘビやイイジマウミヘビなどは非常に良く見かけるウミヘビになります。
大きさは30~100センチほどで、ヘビそのものの姿をしており、白黒のシマ模様の種類が多い。
ウミヘビはその名前の通り、水中に生息しているヘビの仲間です。通常は水底付近にじっとしていることが多いのですが、呼吸のため水面まで泳いでくる事もあります。
ウミヘビはコブラの仲間と考えられており、非常に強力な神経毒を持っています。
性格はおとなしく人に向かってくる事は殆どありませんが、身の危険を感じた場合には噛まれることもあります。
噛まれた場合には痙攣やしびれが起き、呼吸や心停止を起こし死亡する可能性もあるため注意が必要です。
海で噛まれた場合には、痙攣により溺れる可能性がありますので、速やかに陸に上がり医療機関に行くようにしましょう。
一説によるとハブの70倍の毒を持っていると言われており、地球最強の毒を持つ生物と例えられています。
遭遇率:非常に高い
毒性:もっとも強い
被害場所:海水浴、シュノーケル、ダイビング
ヒョウモンダコ
熱帯の海に生息する小型のタコで、大きさは10センチほどしかありません。
沖縄には以前から生息していましたが、近年は海水温の上昇からか、関東や北陸地方でも目撃されるようになりました。
ヒョウモンの名前の由来通り、体に青紫色の綺麗な斑点があるのが特徴です。他のタコと同じく、体の色を瞬時に変化させることができ、刺激を受けた時のヒョウモンは分かりやすいのですが、通常は分からないことも少なくありません。
小さなタコで珊瑚礁や潮だまりなどの浅瀬に生息しており、海で遊ぶ場合には注意が必要な生物です。毒があるタコとは思わずに捕まえてしまい噛まれるケースが多いようです。
唾液にはテトロドトキシンというフグと同じ毒が含まれており、噛まれた場合には中毒を起こし死亡する可能性もあります。
遭遇率:やや低い
毒性:かなり強い
被害場所:珊瑚礁や潮だまり
エイの仲間
沖縄には複数のエイが生息しており、アカエイやマダラトビエイなどはよく見かける種類です。
エイの仲間は基本的におとなしく、襲ってくることはありません。
アカエイなどは砂地に潜って隠れている場合もあるので、誤って踏んでしまったり脅かした場合などに刺される可能性があります。
エイの毒はしっぽの付け根にある針にあり、タンパク毒を持っています。刺されると腫れあがり、細胞が壊死する場合もありますので注意が必要です。
沖縄ではそれほど頻繁にみられる生物ではありません。
通常は水深4~5メートル以上の場所に生息していますが、稀に水深1メートルほどの浅場まで入ってくることもあります。エイを見かけた場合には、脅かさないように立ち去れば通常は刺されることはありません。
万が一刺された場合には、45度以上の温水に付けることにより、無毒化する応急処置をしましょう。
遭遇率:低い
毒性:強い
被害場所:ある程度深い場所
ゴンズイ
ゴンズイは海水に住むナマズの仲間で、口元にあるヒゲと黄色いラインが特徴です。
成魚は30センチほどになるのですが、海の浅瀬では体長5~10センチほどの幼魚が、群れで泳いでいる所をよく見かけます。ゴンズイ玉と言い幼魚の時は群れになる性質があります。
背ビレ、胸ビレに毒があるので注意が必要です。
おとなしい性格のため、通常襲ってくることはありませんが、ボールのように塊りになり水底を泳いでいる姿が可愛く、触ろうとして刺される場合が多いようです。
数十センチの浅瀬にいる場合もありますので、好奇心が強い子供などは注意が必要です。刺された場合には、毒により赤く腫れあがります。タンパク毒であるため45度異常のお湯に付けて、解毒する応急処置が有効です。
遭遇率:やや高い
毒性:強い
被害場所:比較的浅い海
オニヒトデ
全身針に覆われたような外観をしているヒトデの仲間です。色は個体差がありますが、黒色から赤っぽい個体まであり、赤褐色の個体をよく見かけます。
大きいものはかなり大きくなり、直径60センチほどのなります。体表に無数の毒棘が生えており、ヒトの皮膚に刺さると毒素によって激しい痛みを感じます。アナフィラキシーショックによって重症に陥ることもあり、場合にっては死に至る可能性もあります。
珊瑚礁や比較的浅瀬でも多くみられますので注意が必要です。
ヒトデの仲間ですので、水底を極ゆっくり移動するため、オニヒトデから襲ってくることはありません。
水底に手を着いた時や、岩にあいだなどに手を入れた時などに刺されることが多いようです。
刺された場合の対応は、なるべく早く血液を吸引し患部を温める応急処置をし、医療機関に行きましょう。
遭遇率:やや高い
毒性:かなり強い
被害場所:ビーチなどの浅瀬
イソギンチャクの仲間
イソギンチャクの仲間には毒を持った種類が多くいます。比較的弱い毒しか持たないものから、かなり強い毒を持つものまでさまざまです。
沖縄の海で特に危険毒性が強く、危険なイソギンチャクは次の3つになります。
・ウンバチイソギンチャク:画像のイソギンチャクです。一見イソギンチャクに見えない姿をしていますが、最も危険なイソギンチャクの一つです。刺されると非常に痛く、火傷のような跡が残ります。海外では死亡例もある危険なイソギンチャクです。
・スナイソギンチャク:砂から触手がたくさん生えた見た目をしたイソギンチャクで、カラーバリエーションがあり綺麗な見た目をしていますが、強い毒を持ったイソギンチャクの一つです。
・ハナブサイソギンチャク:こちらも砂から生えている木のような見た目をしており、大きさは20センチほどになる大型のイソギンチャクです。触れると砂の中にスッと隠れてしまうイソギンチャクです。毒性は強く激しい痛みがあり、火傷のような跡が残ります。
イソギンチャクは世界に800種以上いると言われており、全ての毒性を覚えることは不可能であるため、分からないイソギンチャクには触れないようにしましょう。
遭遇率:高い
毒性:種類によりかなり強い
被害場所:種類により様々
アンボイナ(イモガイ)
5~10センチほどの貝殻をもつ巻貝の仲間です。アンボイナはイモガイの仲間であるため、毒がある貝で紹介されるイモガイと、基本的に同種と考えて問題ないと思います。タガヤサンミナシガイも同じような毒を持つ巻貝になります。
イモガイ類はコノトキシンという神経毒を持っており、なかでもアンボイナは死亡や重症者が多い傾向にあります。毒性の強さはコブラの30倍以上とも言われており、刺された場合は一刻も早く心臓に近い所を紐などで縛って毒を吸い出し、ただちに医療機関を受診する必要があります。
毒の強さから殺人貝と呼ばれることもあるくらいです。
イモガイの仲間は噛まれると毒があるのではなく、毒がある矢のような器官を刺してきますので、貝殻にしか触れていない場合など、少し離れた場所でも刺される場合があります。
磯遊びや潮干狩りなどでも見かけることが多のですが、毒があるとは思わず触ってしまい刺される場合が多いようです。綺麗な模様がある貝殻をしていますが、誤って触らないようにしましょう。
初心者には毒が無い貝と見分けがつかない場合もありため、毒がある可能性がある生物には触らないようにしましょう。
遭遇率:高い
毒性:非常に強い
被害場所:ビーチなどの浅瀬
ガンガゼ・イイジマフクロウニ・ラッパウニ
ウニは食用にされているため、毒がないというイメージがあるようですが、種類によっては棘に毒を持っているウニもいるため注意が必要です。
沖縄の海でよく見られる毒があるウニの仲間は、ガンガゼ・イイジマフクロウニ・ラッパウニの3種類をよく見かけます。
上の写真のウニはガンガゼと呼ばれ、20センチほどある細長い棘が特徴です。この棘に毒があり、刺されると痛みとともに腫れあがります。場合によっては重症化する可能性もありますので注意が必要です。
比較的浅い場所にも生息しており、昼間は岩の間などに隠れている場合が多いのですが、夜間には穴から出て動きが活発になります。
イイジマフクロウニという厚みが薄いウニには、ウニの中でも比較的強い毒を持っています。刺されると電撃を受けたかのような激痛が走り、赤く腫れあがる場合があります。
洞窟や岩陰など薄暗いところに多く生息しているウニで、岩場などに手を入れた時に刺される危険性があります。

砂地やガレ場などで多く見られるラッパウニは、棘の先端がラッパ上になっており、その間から出ている触手に小石や葉っぱなどを付けて隠れています。場合によっては体全体を小石や海藻などで覆っており、分かりずらい場合もあります。
比較的浅い場所や砂地の海に生息していますので、海水用やシュノーケルでも注意が必要なウニです。
このウニも毒がありますので、誤って触れないよう注意が必要です。
遭遇率:高い
毒性:中程度~低程度
被害場所:深度に問わず
珊瑚の仲間
サンゴと聞くと岩みたいな植物と思う方も多いと思いますが、サンゴは植物ではなく動物になり、クラゲやイソギンチャクに近い仲間になります。
そのためサンゴにはクラゲのように、刺胞(しほう)という小さな毒針をもち、プランクトンを捕まえたり、身を守ったりする刺胞動物になります。
多くのサンゴは毒性はあまり強くなく、触れるとヒリヒリする痛みを伴い、赤くカブレる程度で済むことが大半ですが、中には比較的毒性が強いサンゴも生息しています。
ファイヤーコーラルに代表される一部のサンゴでは、触れると火傷をしたような痛みを伴うサンゴもあります。こちらのサンゴも数日間は赤くカブレ強いかゆみを伴います。
遭遇率:やや高い
毒性:種類により強い
被害場所:珊瑚礁などの浅瀬
アイゴの仲間
アイゴは沖縄ではありふれた魚で、いろいろな種類が存在し、種類により大きさや色なども異なります。通常は20~30センチほどの個体を多く見かけます。
沖縄でビン詰めになった、塩漬けの小さな魚を見た事はないでしょうか?スクガラスとよばれ販売されているのは、アイゴの稚魚になります。
背ビレ、尾ビレ、胸ビレの棘に毒があり、刺されると痛みとともに腫れたり、関節痛を起こすことがあります。
沖縄の海では多く生息していますが、海で泳いでいて刺されることは殆どなく、捕まえたりしない限りは危険性は低いので必要以上に心配する必要はありません。釣りなどで刺される場合が多いので注意しましょう。
遭遇率:非常に高い
毒性:中程度
被害場所:釣りなどで多い